「立ち直るために1,600キロも歩かないといけないなんて、気の毒に」

 

同名の映画を見て、ずっと読みたいと思っていた原作本(実話)を読んでいます。
この投稿のタイトルにした「立ち直るために1,600キロも歩かないといけないなんて、気の毒に」は、母親の死をきっかけに、自暴自棄になってすべてを失った主人公が長距離徒歩の旅に出掛ける際、元夫からかけられた言葉です。

主人公が歩いたのは、カナダとメキシコ国境をつなぐパシフィック・クレスト・トレイルという約4,300キロのハイキング道の一部。
日本では「ハイキング」というと、安全快適な道を想像するかもしれませんが、4,000メートル級の山あり、砂漠あり、毒蛇やクマのいる過酷なコースです。
すべてを通して歩ききるには、歩く速さにもよりますが、大体5ヶ月はかかると言われています。
水場や積雪、食料の補充を考えると、のんびり歩けないところが難しさの一つです。
(ゆっくり歩きすぎると水や食料がなくなり、降雪すると雪山を歩く知識や技術、道具を背負わないといけなくなる)

本の主人公はハイキング未経験者のため、不要な道具や本数冊まで持参して読者を笑わせてくれますが、よくよく考えると人生のどん底にいてもパシフィック・クレスト・トレイルを歩くための道具代や費用をウェイトレスの仕事で貯め(数十万円はかかると言われています)、体重の約半分の重さがある荷物を背負い、体のあちこちから血を流しつつ、一般的なハイカーの数分の一のスピードででも歩き続けたのだから、元々かなり強い人です。
何度も「やめて町に下りよう」と思うところがリアルで、実際補充目的以外で町に下りたりするのですが、人との些細なコミュニケーションに支えられて、また山に戻ってきます。

のちに著者(主人公)が語っているように、「ロングトレイル(長距離ハイキング)の7-8割が不快。あとになって、やってよかったと思うだけ」。

それなのに、なぜお金をかけ、心身を痛めつけてまで歩こうとするのか。
それが何の役に立つのか。
そんな疑問が、主人公の元夫の言葉に集約されていると思います。

この本の中に、「(よいことも悪いこともすべて)これまでの道筋があったから、今のわたしがいる」という言葉が出てきます。
「悪いこと、不快なこと、過ちも含めて自分を受け入れる」というのは、よく言われることですが本当に難しい。
それを日常生活でできる人は、長距離を歩く必要はありません(うらやましい)。
わたしは何キロ歩く必要があるのかな?と思いつつ、この本を読んでいます。

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