無限ループ

 
「人は、自分が経験した以外のことを理解できない」という説があるけど、それを信じたくない自分がいる。
それを認めてしまったら、「新しい経験に開かれている人は理解力が増し、閉鎖的な人の理解力は伸びないまま」ということになってしまうからだ。

経験は想像力でも補える。
ただ想像力も乏しい人は、一体どうしたらいいのか。

昨日バイト先で、「もり子さんの言っていたことがやっとわかりました。(仕事のやり方に関して)人によって言うことが違うので、どうしたらいいのかわかりません!」と、新人の人が泣きついてきた。
わたしのあとに入る人はすぐに辞めていくため、わたしも下から2番目の新人。
新しく入った人に指導したい(単にエラそうにしたい)先輩が山ほどいる中、わたしは「自分も新人なので、仕事のことは他の先輩方に聞いていただけますか? ただ人によって、その時々によっても言うことが違って戸惑うことがあると思います。それはわたしも経験していることなので、気にしない方がいいと思います」とだけ伝えていた。
それ以降、彼女と話をすることはなく、順調に仕事をしていると思っていただけに、突然泣きそうな顔でわたしのところに来た時は胸が痛んだ。

仕事のやり方を統一することは、そう難しいことではないと思う。
みんなで話し合ってマニュアルを作り、それを共有すればいいだけ。
判断に迷う時はマニュアルを開き、新しい事例が発生したら、またみんなで話し合ってマニュアルに加え、中身が更新されたことを全員に周知する。
誰もが参考にできる「基準」を明確にすることで公平化を図れる、法律と同じ仕組み。
数万人の従業員がいる会社でも、そうやってルールや手順を決めている。
現にわたしも、これまでに幾度となくマニュアルを作ってきた。

でもこのような提案は、わたしの住んでいる地域の職場では簡単に却下される。
仕事に流動性がなく、同じ作業を何年もしている人の多い環境では、自分がこれまでにやってきた方法を変えたくないという人が多いことと、自分の言動が気分によってぶれている可能性をまったく疑わない人が多いからだ。

わたしも新しい職場に行ってすぐの頃は、「どれが正しいやり方ですか? マニュアルを作ったらどうでしょう?」と言うのだけれど、「マニュアルに頼ったらいけない」「他の人はみんなわかっているから、わざわざマニュアルを作る必要はない」と言われてきた。
そして結局なあなあのまま進んでいく。

実際に先輩方から話を聞くと、「やり方がその時々(状況ではなく上の人の気分)で違うのは困るよね」と言う人の方が多数派なのだけど、声の大きいヒステリックな人の意見が重視される。

理不尽な環境を強いられてきた人が、それを当たり前だと思うのは自然なこと。
そしてその環境を次の世代に継承していく。
「別の方法があるかも」という発想自体が浮かばない人に、どうやって説得すればいいのだろう。

誰とも愛想よく話し、元気で前向きな新人さんの口数が減っている。
昨日はたまたま先輩方のいない時間帯だったので、彼女が「どうしたらいい?」と言う当面の問題だけ事務所に突入して白黒つけてきたけど、先輩がいる時は、まず先輩に聞くのが筋。
「気分で意見を変えていたら、新人さんは戸惑うんですよ」と言ってもわからないだろう人に、これ以上何も言えない。

悪しきものに漬かってそれに染まり、新しいものを排除してそれを維持する無限ループ。
「新人さん、負けるな!」としか言いようがない。 

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