まだら模様の美しさを見せてくれる本

 
出典:朝日新聞出版

リアルの世界でも、ネット上でも、忙しそうにしている人が多い。
だからか、考える時間がもったないと言わんばかりに、すぐに何らかの答えを出してくれる人やものがもてはやされていると感じています。
あれは正しいのか間違っているのか。
あの人はいい人なのか悪い人なのか。
本当は簡単に白黒つけられるものではないのに、一旦白か黒のラベルが貼られると、安心感を覚える人が多いようです。

そんな世の中に対して、あえて「黒」のラベルを貼られた人に迫ることで「白」の中身を問うという手法をとっているのが、上出遼平さんの『ハイパーハードボイルドグルメリポート』。
「僕たちは、食べることから逃れられない。・・・・・・善悪を越えて、人は食う。生きるために食い、食うために生きる。人間の振る舞いの何もかもが、その日の『飯』につながっている。だから『飯』は世界を見せてくれる」という信念の元、「黒」のラベルを貼られた人たちが何をどのように食べているのかに迫ります。  

でも正直言って、わたしはテレビ版の『ハイパーハードボイルドグルメリポート』が苦手でした。
間口を広げるためとはいえ、「ほらほら、こういうヤバい世界の人、見たいでしょ?」と言わんばかりのタイトルと構成にのみハマっている視聴者の顔がチラついて、ずっと見る気になれなかったのです。
その後ポッドキャスト版が始まり、テレビよりは映像がない分聞きやすかったものの、今度は環境音を含めたリアルな音の刺激が強すぎて挫折。
ならばと手にとったのが書籍版でした。

本の方は、「この不景気な時代によく海外ロケに行けてたな」「よくこんな人たちが食事風景を見せてくれたな」という疑問の答えが明らかになっています。
予算の都合で仕方なかったのかもしれませんが、現地コーディネーターとディレクター・上出さんのたった二人で、時には上出さん一人で取材していたからこそ貴重な話を記録した上で無事に帰って来られたのだと納得しました。
文章にものすごい力があって、夢中になって読まされます。
取材先の国の歴史がわかりやすく解説されているのも親切です。
本を読んだあとに映像を見たり、音声が聞きたくなるのもいいと思いました。

たぶん、この世の中には真っ白な人もいるのだろうけど、大半の人は白と黒が入り交じっているような。
そのまだら模様をあらためて「いいな」と思わせてくれる本でした。

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