愛媛県・石鎚山系の思い出2:強者たち

 
山行3日目は小雨の中スタート。
四国名物の笹藪を堪能。

足元を見下ろしたところです。
黒いのはウエストポーチ。
2日目に山中で拾った枝を2本目の杖代わりにしたら大活躍。

所々、目の高さほどの藪がありました。
登山道は直進。これがずっと続きます。

以前なら「藪地獄(涙)」と嘆いていたかもしれないけれど、わたしが目標にしている山域は、これ以上の藪が当たり前のエリアです。
「藪トレ、藪トレ♪」と思いつつ、一歩一歩足元を確認しながら進みました。
今回の山行は登山客の多い所を除き、ほとんど藪が前提のルートです。

そして歩くこと2時間。
徐々に雨風が強くなり、風速14~17メートルぐらいの状態に。

森林限界を越えた稜線上なので基本的に吹きさらしですが、
木の生えた場所も点在し、そこで雨風を避けて休憩します。

前回の福島山行で鍛えられたおかげで、このぐらいの風では何とも思わなくなっていました。

しかしこの風雨の中、何かのエンジン音が聞こえた時は驚きました。
というか、てっきり気のせいだと。
だってここは標高1900メートル以上の稜線で、こんな雨風が吹いているんですよ!
なんと目の前に現われたのは、そこで草刈りをする男性だったのです!!!(驚愕)

まずは深々と頭を下げ、感謝の意を告げる。
「こんな天候の悪い中、藪を刈ってくださって本当にありがとうございます!!」
すると、「こんな天候だからですよ」と笑う50代ぐらいの男性。
たしかにこの先には、年間10万人が訪れる石鎚山があります。
登山客の少ない悪天時に整備をするというお心遣いだとは思いますが、藪の状態を見れば、このルートを歩く人はそれほど多くなさそうです。
それなのにわざわざ悪天候の日に藪を刈ってくださるとは。。。
強い雨風に打たれて彼は鼻水を垂らし、わたしも彼ほどではない鼻水を垂らしながら立ち話。

そしてその次の言葉にも驚きました。
「この先に僕のツエルト(簡易テント)を張ってますから、そのまま真っ直ぐ進んでください」
こんな日にツエルト泊?!!! しかも平らな場所も、十分な空間もないルート上のどこにツエルトを張っているのだ?!と、わたしは自分の耳を疑いました。

何となく彼や、彼のキャンプ地を撮ることがためらわれたため写真はありませんが、ツエルトとはこんな物です。


草刈りをしてくださっていたボランティアの男性は、その先にある山頂の畳1畳半ぐらいのスペースに風よけのブルーシートを張り、その下にツエルトを張っていました。
どちらもボロボロと言っていいほど使い込まれています。
ツエルトは1枚の布をテント状に張っているだけなので、雨が降ればすぐ浸水。
その上風速14~17メートルの風が確実に吹いていますから、ブルーシートもツエルトも原型を留めないほど変形しています。
「水と食料、草刈機と燃料を担いで登り、ここで一夜を過ごしたのか。。。 さすが、本物の山男は違う。。。」と、姿の見えなくなった彼に対してさらなる尊敬の念と羨望の感情があふれてきました。
わたしも彼のようなタフな人間になりたい。。。

そんなことを考えつつ、藪がなくなって快適な登山道を1時間半ほど進むと、今度はカッパも着ずに草刈りをする別の中年男性が。
しかもそのうしろには、日傘のように小さな傘を差し、帽子と防虫ネットをかぶった半袖・アームカバー姿の中年女性がいる!!! その姿、まるで街中。 しかも手ぶらでただ優雅に立っているだけ。
しかし彼女がいるのは、相変わらず強い雨と風が吹いている、こんな場所です。

晴れていれば、こんな感じの所

どうやらここで草を刈ってくださっている方も、先に会った男性と同じボランティア・グループに所属しているとのこと。
「この先に、昨日から山に入って作業している奴がいたでしょう?」と、彼も風雨の中でニコニコ笑顔。
しかしカッパもなしに登山道を整備してくださっている男性はまだしも、何もせず貴婦人のように立っている女性にいたっては、その姿に驚きすぎて、言葉を交わすことすらできませんでした。
この時の気温は17度。 強風のため体感温度は3度~0度のはず。
作業をしているなら体も熱を帯びるでしょうが、何もしないのに涼しい顔をして半袖で立っていられるその感覚。
横殴りの雨を、さもなきもののように小さな傘で防いでいる?? というか、強風であおられないの??? 
彼女が何者なのかはわかりませんが、相当な強者であることは明らかでした。。。

その後石鎚山に入ってからも、さらに数人の草刈りボランティアの方々とすれ違いました。
そして驚いたのが、こんな悪天候の中でもたくさんの登山客がいたことです。
しかもその半分はカッパを着ていない。
まるで街中を歩くような格好の人が多いため、最初は雨トレのために来ている地元の人かと思っていました。
するとすれ違いざまに、「あなたはカッパを持ってきてエライねぇ~。雨が降ることを知っていたんだねぇ~」と言われて初めて、下界は晴れているのか?と思いました。
わたしは山に入って3日目。
電波が入ってもアンテナは1本しか立たず、天気予報を見ることができないため、その日の天気を知らないのはわたしの方だったのです。
しかし晴天で石鎚山に着いたにしろ、カッパがなくて雨に降られたら、わたしならすぐさま下山します。
それなのに半袖・Gパン姿でも風雨の中山頂を目指す方々は相当な強者ぞろいだと思いました。
(最短コースで往復4時間、ロープウェイを使った最もメジャーなコースでも5時間半かかる)

ずっとカッパを着ていたわたしも、1日中雨に打たれてキャンプ場に到着した頃は肌寒く感じていました。
後日出会った人に、この日テント泊したことを伝えると、「あの暴風雨の中、テントで泊まったんですか?!!」と驚かれました。
しかし先にも書いたように、福島山行で鍛えられたわたしは何とも思っておらず、あの状況を〝暴風雨〟だとすら感じていませんでした。
むしろこの日の行程で無数の強者たちに出会い、十分な装備を持った自分のことを、「なんと堅実で慎重な人間なのだ。もっと豪胆にならなくて大丈夫か? そんなにヤワで山を歩けるのか?」とすら思っていたのです。
今でも〝暴風雨〟の急斜面で、貴婦人のように立っていた女性の姿が忘れられません。

愛媛県・石鎚山系の思い出3につづく

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