居酒屋

 
写真:kaori kubota 出典:Unsplash

先日、6~7年前の同僚に誘ってもらい、飲み会に行ってきました。
一緒に働いていた時、その同僚は30代前半。
「もり子さんは女の登竜門をくぐっていない」「『人として』ってどういう意味ですか?」と、わたしに言った人です。
彼とは頻繁に連絡を取り合う間柄ではないけれど、彼が東京に出向する際、わざわざ電話でそのことを伝えてくれたり、わたしも気が向いた時に電話してみたり、彼の会社の近くを通る時は、顔だけ見に寄ったりするような関係です。
ほとんど連絡をとっていないのだから、彼の連絡先を更新していなくてもおかしくないのに、なぜか電話番号を残し続けている人。

思えば彼と働いていた職場は、きれいに刈り揃えられた芝生のような所で、わたしはそこに迷いこんだ野良犬のようでした。
みんな、朝普通の音量であいさつすることはなく、隣や目の前に座っている人にもメールでやり取りをする。
各人が会社の携帯を渡されているので、誰かに電話を取り次ぐこともない。
朝から晩までシーンとして、シーンとしたまま1日が終わる。
でも「あいさつぐらい、普通の声でしたってええだろう」「すぐそこにおるんだけん、直接話せばええだろう」と思っていたわたしは、普通にあいさつをして普通にしゃべっていました。
面白いことがあれば声を出して笑うし、それは違うだろうと思えば、「ちょっと!」と言って反論することもあった。
つまりわたしは、その職場で異色な存在だったのです。
もちろんそれが気に入らず、嫌なことを言ってくる人もいましたが、まったく意に介してはいませんでした。
ちゃんとやることをやっとんだから、何の文句がある?という感じです。

そしてわたしがワハハ、ガハハと笑っていたら、きれいに刈り揃えられた芝生のようだと思っていた人たちも、次第にそれぞれの個性を見せてくれるようになりました。
すると魅力的な人の多いこと!!
わたしは大好きな人がどんどん増えて、意外な人に声をかけられて飲みに行ったり、食事に行ったり、そこで充実した毎日を過ごすことができました。
仕事の内容はとてもレベルが高く、常に必死MAXだったけど、そこで働く人との交流が楽しかったおかげで、なんとか任期を終えられた感じです。

でも、産休代替要員だった自分は、前任者が戻ると同時にその会社をやめました。
もちろん〝きれいな芝生〟を強いてくる会社の雰囲気が合わないという理由もありましたが、出張中の本人には何も告げずにチームや座席を変更したり、産休中に本人に告げずに職務内容を変更しても当たり前だと思っていた上司のやり方が、どうしても許せなかったからです。
出張や産休から戻ってきた人は、久しぶりに出社をしたら、自分の席が知らない内に移動されていたり、所属チームや仕事内容が変わっていることに驚く。
上司が意図的にそのことを伝えていないのに、臨時職員のわたしから本人に言うわけにはいきません。
しかも部内の庶務を担当するわたしは、本人の了承も得ないまま、勝手に机や荷物を移動しないといけませんでした。
「せめて事前に伝えたらどうですか? そういうやり方でもいいと思っているんですか?」と上司にたずねると、「いいと思っている。それで、これまでに支障があったことはない」と、何の疑問も抱いていませんでした。
「でも、もし自分がそういうことをされたら嫌でしょう?」と言っても、「会社とはそういうものだから」と言って、取り合ってはもらえない。
万事が万事、そんな感じで、そこで働く人に対する思いやりのかけらもないと思いました。
他の人たちがそんな扱いを受けるのを見るのはつらかったし、自分がそんな風に扱われるのも絶対に許せませんでした。

そういう職場で10年以上働いてきたからか、今回飲みに誘ってくれた元同僚も、当時は「人として」という言葉の意味がわからない状態でした。
彼は一緒に働いている頃から、時々飲みに誘ってくれたり、個人的に送別会を開いてくれたりしたけれど、自分の中でどこか、わたしのことをただ面白がっているだけではないか?という疑いの気持ちがあったのです。
野良犬のような人間がただ珍しくて、誘っているだけではないか、と。。。

でも本当にそうであれば、わたしが退職して何年も経つのに、わざわざ出向する時にあいさつの電話をくれたり、飲みに誘ってくれるのはおかしい。
もしかして本当に自分のことを好ましく思ってくれているのではないかと思い始めました。
そして今回、彼の主催してくれた飲み会に行って、その思いが6年越しに確信に変わったのです。

まず彼が集めてくれたのは、全員わたしの好きな人たちでした(今思えば送別会もそうだった!!)。
中には、「どうしてわたしが彼のことを好きだってわかったの??」と思うような人も含まれていて、それにびっくりしました。
彼が選んでくれた店も、収入の少ないわたしが気を使わなくてすむ、安い居酒屋。
結局ごちそうになってしまったけど、自分の持って行ったお金で足りるお店だとわかっていたから、安心して飲め、お腹いっぱい食べることができたのです。
それに、もしかしたらわたしを気遣って、店内でタバコを吸えるお店を選んでくれたのかもしれない。。。(喫煙者はわたし一人)

彼の勤める会社は、お昼ですらオサレ~で高いお店に行くのが当たり前。
「月収10万円ちょっとの臨時職員を、何千円もする昼食会に参加させるのは思いやりに欠ける! もう二度と会社の昼食会には行かん!!」と言っていたわたしの言葉を覚えていたのでしょうか(苦笑)。
実は見ていないようで、わたしが好意を示しそうな相手を見ていたのでしょうか。
非人間的な会社に毒され、わたしのことは面白がっているだけかも、と彼の思いやりを疑ってた自分の方が、よっぽど誠実さに欠けていたのです。。。

今回の選択を見て、彼の思いやりは本物だと思いました。
不誠実だったのは、それを疑っていたわたしの方。
これからは遠慮せず、全面的に愛情をぶつけていくよ!と、別れ際に思わずハグ。
6年前であれば、「セクハラ!」「セクハラ!」と嫌がっていただろう彼は、黙ってわたしの抱擁を受けとめてくれました。

彼には何度も言っているけれど、個人的に人として(また出た!笑)一番大切だと思うのは人柄です。
どこに勤めているとか、年収がいくらとか、役職がなんだというのは一切関係ない。
もちろん世の中の7~8割がそういうものを重視して生きていることは知っている。
でも少なくともわたしはその人の人柄しか見ていないし、その人が他人を思いやれる人間であれば、それだけで尊敬しています。

6~7年前の彼なら、「もり子さんがそう言っても、他の人はそうじゃないから嬉しくないです(キッパリ)」と言いそうだけど、今はどうなのでしょう。
およそ彼の会社の人があまり行きそうもない居酒屋を、化粧もせず汗臭いおばさんのために選んでくれた彼。
わたしが思っていた以上に器が大きく、温かい人なのかもしれません。

コメント

  1. 女の登竜門とは?笑

    素敵な人ですね。少し冷たさを感じる職場も開いて見ればそれぞれ素敵な感性を持った人ばかりで。
    そういう環境も私はもり子さんが引き寄せているのだと思います。
    今でも関係性が続いているのは、引き寄せる魅力があるから。

    人を思いやれるということも素敵なことです。最近、仕事柄いろんな人の話を聞きますが、共通して欠けているのが「思いやり」です。なぜ、1番大切だと思い一緒になったパートナーなのに思いやることができないのか?と疑問です。

    身近な人を大切にできない人は、周りの人も大切にできないと思います。

    出会いは大切にしたいよね。

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    1. 「女の登竜門」は、表でニコニコ、裏で陰口をたたく技術を身につけることだよ(苦笑)。

      ここ数年のバイト先で思うのは、自分を最も哀れんでいる人には、総じて思いやりが欠けているということ。
      自分の選択の積み重ねが現状につながっているのに、それを認識できず(もしくは受け入れられず)、自分にとって不利なことすべてが誰かのせいだと思っているのではないかな? だから家族や職場の人という身近な人間にその責任をすべて押しつけて、思いやることができないのではないか、と。

      そこまで身近な人を疎ましく思っているのであれば、別れるなり、職場を変えるなりすればいいのだけど、それによって生じる不利益を受け入れたくないから、利益だけを享受しつつ理不尽に嫌う相手と一緒にいるのかも。
      それさえもその人の選択なのに、それに気づいていない/受け入れていないから現状は変わらないの堂々巡り。
      そんな人を救うのはなかなか難しい。

      「汝自身を知れ」「天は自らを助ける者を助ける」という言葉があるけど、その通りだと思う。
      自分自身を認めず、自分自身を助けようともしていない人の思いやりの欠如に関しては、「そうですか~」で受け流すことしかできないもり子です。

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